【Best Emo of the Year】2023年編
前回は6部門でしたが、「V.A. / Split of the Year」を2つに分けて新たに「Single of the Year」と「Rookie of the Year」を加えた全9部門にしてみました。それぞれ大賞1作品と受賞3作品を選考します。
ということで、参考程度に楽しんでいただけましたら幸いです。
2023年はとにかくScreamo界隈が大盛り上がりで、新人もたくさん登場したのはもちろん、Saetia、In Loving Memory…、Usurp Synapseなどのレジェンドバンドが再結成するなど、話題が尽きない一年でした。そんな中、Jeromes Dreamから5月に発表されたのがこの4th アルバムです。
『the whaler』- Home Is Where
→The Fifith Waveの中心的な存在であるHome Is Whereの2nd アルバムです。Record SetterとのスプリットではがっつりSkramz系のサウンドでかなり驚きましたが、アルバムの方ではいつものHome Is Whereで、安心しました。ジャケットもいいですね。
『Altering a Memory』- Feverchild
→古参Emoファンも唸らせているベルギーの大型新人バンド、Feverchildのデビューアルバムです。期待を裏切らない傑作で、Hot Water Music、The Casket Lottery、Giants Chairなどの渋めのPost-emoがお好きな方は必聴です。
『songs for bugs』- cicadahead
→こちらもBedroom Emo界の大型新人、cicadaheadのデビューアルバムです。まだまだBedroom Emoの勢いを感じさせる傑作です。
とんでもない間隔で作品を発表し続け、とにかく大活躍だった新レーベルBSDJのオーナーであるJordan de Graafが参加している新生Bedroom Emoバンド、GingerbeeのデビューEPです。Jordanは日本を拠点に活動しており、他のメンバーにもカナダやブラジルが拠点のメンバーがいる、インターネットで結成された多国籍バンドです。
『otro gesto estúpido que decido disfrazar como una carta de amor para ti』- mil ataris por segundo
→ベネズエラのTwinklecoreソロプロジェクト、mil ataris por segundo
『drought』- Guitar Fight from Fooly Cooly
→Camping in Alaskaの『Please Be Nice』10周年記念ツアーに参加していることで知られる、テネシーのTwinklecoreバンド、Guitar Fight from Fooly Coolyの新作EPです。Planes Mistaken for StarsやRunning From Dharmaを彷彿とさせるキレッキレのギターに力強いボーカルが畳みかける傑作です。ジャケットにゴヤの「Witches' Flight」を採用するセンスも素晴らしいですね。
『Final Demos』- Penfold
→突如発表された、3rd アルバム用に制作していたという未発表2曲です。The MoiraiとPenfoldのちょうど中間といった感じで、当時発表されていたらPost Indie-emoの歴史はまた違ったものになっていたでしょう。現在はなんと『Our First Taste Of Escape』の「Complete Version」を制作中とのことなので、期待が高まります。楽しみで仕方ないです。
新設の「Single of the Year」ですが、ほぼこの曲のためと言っても過言ではありません。とにかく最高で、2023年の後半はこの曲を聴いていた記憶しかありません。僕の一年を象徴する1曲です。アルバムとは違い、すぐに聴き終わるのがシングルの良さでもあるので、とりあえず聴いてみてください。
『Miggy's Delight』- The Hated
→まさかまさかのThe Hatedの未発表曲です。これ以上語ることはありません。ありがとうございます。
『Worthless - Single Version』- The Lovely Robot
→元々はAcoustic Emo的なキャッチーなバンドでしたが、突然この楽曲をきっかけにがらりと音楽性が変わりました。あまりの変貌に理解が追いつきませんでしたが、曲の完成度が高く地味にお気に入りの1曲です。この次に発表した「All but a Memory - Single Version」も結構いいので、この曲が気に入った方は合わせてどうぞ。
『One Way Street』- Fruitfly
→バンド自体、この楽曲で知ったのですが、ドストライクでした。どうやら新作フルアルバムを制作中のようです。今年要注目のバンドです。
『1996-1999』- Breaker Morant
→激渋、発掘系音源集です。Prozac Memoryに在籍していたBen Graham、Sam Dothage、Todd Ramseyの3人がやっていた短命バンドです。音源集といっても作品は1998年に発表したAmputee Setとのスプリットアルバムのみで、そこに未発表曲を1曲加えたものです。普通のEPと変わらないボリュームではありますが、内容が素晴らしいのでそんなことは気になりません。
『Forever』- Vine
→後にBroken Hearts Are Blueを結成するCharles WoodとRyan Gageが在籍していたバンドの音源集です。ありそうでなかった音源集ですね。
『Discography』- Heroin
→後にリプレスされましたが、元々はRecord Store Day限定で発表された音源集です。CD版の音源集『Heroin C.D.』に未発表曲を追加した完全版的なやつです。RSDの時点で1600枚作られていて、その後すぐにリプレス盤が2色発表されていましたが、Heroinってそんなに売れるんですね。レジェンドなのは百も承知ですが、普通に驚きました。
「The Emo Diaries」や「Post Marked Stamps」ほどの派手さはないかもしれませんが、完成度はそれらに匹敵する「Emotive Songs For Emotional People」の最新作です。
『Balladeers, Redefined』
→とりあえずこれを聴くだけでも、現行のScreamoシーンが大まかに分かってしまうほど錚々たるメンツによるコンピです。新しいバンドだけではなく、絶賛活躍中のレジェンド達もしっかりと含まれていて、非常にバランスが良い作品です。
『Coma Regalia - The One Who Became Many』
→レジェンド的な立ち位置になりつつあるComa Regaliaのトリビュートアルバムです。メンツの豪華さで影響力の高さがよくわかります。
『Emozuelan 2006-2010』
→3回目の登場となるmil ataris por segundoことJuan Diegoが設立した新レーベルtresmilの、第一弾作品として発表されたコンピです。2006年から2010年頃のベネズエラのEmoシーンをまとめたニッチすぎる作品です。最近のベネズエラならまだしも、約15年前ともなると全く情報もないので、非常にいい試みですね。
Thirty Something Recordsといえば、Deep Elm Recordsと提携を結んで良質な再発盤を発表していましたが、これは予想外すぎる再発でした。My Own Pine BoxはAgna Moraine's Autobiographyのメンバーのサイドプロジェクト的な立ち位置で、2001年に50枚だけデモ音源を制作したのみの短命バンドでした。ごく一部の変態Emoオタクしか喜ばないような作品なので、夢のような再発でした。まさかレコードで聴ける日が来るとは思いませんでした。ありがとうございます。
『Following The Holy Moon Goddess』- The Summer We Went West
→こちらもなかなかマイナーな作品の再発ですね。隠れ優良Post Indie-emoバンドです。
『As Years Pass and Feel Like Seconds』- In Loving Memory…
→再結成をして新作EPも発表したIn Loving Memory…の唯一のフルアルバムの再発盤です。2012年にInit Records音源集が出ているため、知名度はそれなりにあると思いますが、この作品自体はCD-Rで少量制作されただけなので、非常にありがたい再発です。これを機に再評価の流れが来てほしいですね。素晴らしい作品です。
『I Am Everyone I've Ever Met』- Algae Bloom
→foxtailsとスプリットを出したことで知られるScreamo Revivalバンド、Algae Bloomの唯一のフルアルバムの再発盤です。初のレコード化というわけではないですが、これもありがたい再発ですね。EP『I Am Still Scared Of Living』の方はカセットのみなので、この流れでぜひこちらもお願いしたいところです。
彗星のごとく現れた若手筆頭のPost Skramzバンド。楽曲、アートワーク、ライブ演奏のどれをとっても1級品のモンスターバンドです。Emoという音楽が誕生してから35年以上が経った今でも、新たにこういったバンドが登場するのは本当にすごいことだと思います。改めてEmoという音楽の凄まじさを実感しました。
Captain Jazz
→イリノイのレジェンドバンドを彷彿とさせるバンド名に、そのドラマーがやっているバンドの伝説的な1st アルバムのジャケットの家が燃えているという、どこから突っ込めばいいかわからない色々とやばいバンドです。楽曲を聴けばただふざけているわけではないことがすぐにわかると思います。めちゃくちゃいいです。
2023年のEmo/Screamoまとめ
Album of the Year
Jeromes Dream自体は2018年に再結成をして、翌年に3rd アルバム『LP』を発表するわけですが、この作品はScreamoファンの間で物議を醸す問題作でした。これまでのEmoviolence要素は完全に消え去り、ミドルテンポの楽曲が中心のPost-hardcoreの影響がかなり強く、ボーカルのスタイルもスポークンワード調の謎の歌唱法に変わっており、はっきり言って自分の中ではもうJeromes Dreamは終わったんだなと思っていました。
そして、新作アルバムを制作していることが発表され、もちろん全く期待はしていなく、フィジカルを買うつもりすらなかったのですが、先行配信曲を聴いて驚きました。おもわず「これだよ!これ!!」と叫びたくなるほどの完璧なJeromes Dreamがそこにはいました。
全体としては王道Emoviolenceというよりは、Post-screamoの要素が強めなので、生粋の初期Jeromes Dreamファンからすれば若干物足りなさはあるかもしれません。ただ、そこは正当な進化といった感じで、もうとにかく素晴らしい作品です。特に「Cosmos In Season」から「AAEEAA」の流れが最高で、3rd アルバムはなんだったのかと思えるほどあの頃の情熱と勢いを感じさせる傑作です。Audiotreeでの配信ライブも素晴らしいので、あわせてどうぞ。
僕たちのJeromes Dreamが帰ってきました。本当に最高です。
EP of the Year
その作品はというと、your arms are my cocoonやHey, ily!を彷彿とさせる王道Bedroom Emoで、とにかく隙のない傑作となってます。
こういう新人バンドが出てくるうちは、Bedroom Emoも安泰ですね。
の新作EPです。1st アルバムが素晴らしく、ここ最近に盛り上がりを見せている南米Emoの中心的な存在でしたが、2023年はBandcampで新作を発表しては削除を繰り返していました。3月に発表された2nd アルバム『quiero ver la lluvia en papel』は現在でも非公開で、なかなか納得のいく作品が作れなかったようです。しかし、年末に発表されたこのEPは素晴らしい完成度で、改めて南米Emoの勢いを感じさせる傑作です。
Single of the Year
『esperame donde acordamos』- mis sueños son de tu adiós + niniö ayer
Split of the Year
制作中であることが発表された時点で、もう傑作であることを確信していましたが、案の定最高でした。mis sueños son de tu adiósとのバランスを考えてなのか、Burial EtiquetteはかなりIndie-emo要素強めな感じで、堪りません。
『5-way worldwide split』- Dear Diary, This is From My Teenage Angst to My Adult Self / Face Turn / Viva il ficus! / Cuando Nada Quede la Naturaleza Tomará su Lugar / don't call me a friend
→Retratos de heroínaとしても活躍するFernando Forbattleの別プロジェクト、Dear Diary, This is From My Teenage Angst to My Adult Selfを中心に制作されたスプリットEPです。あまり情報のないバンドがほとんどですが、どのバンドもめちゃくちゃいいです。
『Split』- Clay Birds / knumears
→カリフォルニアの新生Post Skramzバンド、2組によるスプリットシングルです。knumearsはVs Selfともスプリットを出していて、Blackened系統の重めなサウンドです。Clay Birdsは徹底したLo-fiサウンドで最高です。
『a lobster, bee, & cicada walk into a bar and find god』- lobsterfight / Gingerbee / cicadahead / godfuck
→Bedroom Emoスプリットです。とにかく楽しい作品です。ジャケットの時点でもう最高ですね。
再結成の直後にギターのJamie Beharのハラスメント問題があるなど色々ありましたが、新たにTom Schlatterが加わった新生Saetiaによるライブ音源作品です。
Compilation of the Year
Instil、You and I、The Assistant、Hundreds of AU、Every Scar Has a Story、Lacrimaなどのバンドを渡り歩きScreamoの生き字引であるTomが加わったことで、Saetiaはもはや無敵と化しました。音声だけでもオーラがすごいです。
『Weltschmerz & Sea of Ice Songs』- Men as Trees
→ミシガンのPost-screamoバンド、Men as Treesの編集盤です。まともな再発は今回がバンド初だと思います。今後もこういうバンドの作品はどんどん掘り起こしていってほしいですね。2008年に発表された2nd EP『Weltschmerz』に、スプリット2作品に収録の2曲を追加した全8曲入りです。
『Spring/Summer Demos '99』- Aletheia
→Chelsea MultiplierやUniform Pantsにも在籍していた、Eliott Porterを中心に結成されたバンドのデモ音源をまとめた編集盤です。Cesspool Projectsが最近、再び動き出して周辺のバンドの再発を行っていますが、非常にいい流れですね。
『basquiat hardcore』- mil ataris por segundo
→「EP of the Year」でも紹介したmil ataris por segundoのライブ音源作品です。本人いわく、当日はかなり酔っていて、チューニングがあまり正確ではなかったとのことですが、それも含めてライブの熱量が伝わる良作です。
2022年に引き続き、2023年も音源集が熱かったですね。豪華なボックスセットを制作するレーベルも増え、非常に盛り上がってますね。以前はドイツのArctic Rodeo Recordingsが音源集に力を入れていましたが、最近は動きが少ないので今後もさらに広がっていってほしいところです。
Discography of the Year
その音源集ブームの中で、中心的な存在なのはみんな大好きNumero Groupですね。その中でも大賞にはEveryone Asked about Youを選びました。JejuneやPohgohなどと並ぶ伝説のTweemoバンドです。作品はどれも再発がなく高騰していたので、待望の音源集です。
V.A. of the Year
The Fifth Waveを満遍なく収録した、相変わらず見事な内容です。最後にKites and Paper Treesを持ってくるセンスはさすがとしか言いようがなく、バラードで切なく締める感じは初期の「The Emo Diaries」を彷彿とさせます。
ちなみにこれがKites and Paper Trees初のフィジカル作品です。ほんとに大好きなアーティストなのですが、デジタル限定のためか全くと言っていいほど知名度がないので、はやく正当な評価をされてほしいところです。
Reissue of the Year
Rookie of the Year
ライブ映像を貼っておくので、気になった方は観てみてください。